2008年12月 5日
有川浩 / 図書館革命
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有川浩さんの「図書館革命」を読み終わりました。
「図書館戦争」シリーズもいよいよ最終巻です。
堂上との約束のために、何を着ていくか迷いに迷う郁が可愛いです。
出だしからベタ甘全開です。
もちろん、そんな当人たちの思惑とは関係なく事件は起こります。
敦賀原発への大規模テロに端を発し、対テロ特措法による権限の強化により、作家から自由な著作を放棄させようとするメディア良化委員会。
それに対してマスコミと世論を味方につけ逆転を狙う図書隊。
そして、第三の勢力ともいえる手塚慧の率いる「未来企画」。
三者三様の思惑だけでなく、さらに登場人物個人の思惑がからみあいます。
これには、郁たちならずとも、状況の把握には苦労しますね。
図書隊と良化隊との逆転につぐ逆転で、はたしてどこにたどり着くのか、最後は息を呑んでページをめくりました。
最後にはまだ検閲は残っているものの、銃のない世界へとたどり着いたことがうれしかったです。
郁と堂上との恋の行方は無事に落ち着くところに落ち着きましたね。
ぎこちなかった二人がエピローグの話までたどりつくには、どのような紆余曲折があったのか、興味深いです。
柴崎と手塚は、最後まで微妙な関係のまま。でも郁に指摘されて顔を赤くしている手塚を見ると、時間の問題なのかな。
普段あまり色恋沙汰に関わる本を読まないせいか、ここまで恋愛成分の多い物語を読んだのは久しぶりです。
正直な話、友人から初めてこのシリーズの概要を聞いたとき、あまりの突拍子のなさにあまり興味をそそられなかったのですが、いざ読んでみたら、社会問題への提起あり、戦闘描写も迫力あり、そして恋愛成分も大盛りで、大変読み応えがあり、楽しく読めました。
やはり、食わず嫌いはよくないですね。
投稿者 utsuho : 18:36 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年12月 1日
有川浩 / 図書館危機
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有川浩さんの「図書館危機」を読み終わりました。
「図書館戦争」シリーズの3冊目です。
前作「図書館内乱」の最後で郁に明かされた「王子様」の正体。
動揺する郁が堂上に対してやってしまった「空白の5秒間」には、おなかを抱えて笑いました。
微妙な乙女心の恐ろしさです。
昇任試験での柴崎もよかったです。
柴崎はわりと子供のあしらいが上手そうですね。
昇任試験にかこつけてしっかり躾までしてしまうあたりは見事です。
手塚と柴崎の距離も少しずつ縮まってきている感じです。
ただベタ甘なだけではなく、差別表現に対する「言葉狩り」への反論のように、現在の社会が抱える問題へも鋭く切り込んでいます。
茨城での県立美術館への救援では、郁の両親との和解の兆しも見えてよかったです。
また、ケンカ上手な上司にかこまれているおかげか、郁もたくましく成長しました。
ただ、それでも大規模戦闘のシーンはつらいものがあります。
そして、図書隊を率いてきた老将の勇退で、今後の図書隊はどうなるのか?
というところで、次巻が最終巻です。
投稿者 utsuho : 14:57 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年11月22日
有川浩 / 図書館内乱
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有川浩さんの「図書館内乱」を読み終わりました。
前回の「図書館戦争」に対して、今回は「内乱」。
一致団結して良化部隊と戦っていた前作から、今回は図書館内部の考え方の違いによる派閥争い。
登場人物それぞれの微妙な立場を意識した駆け引きや策略による神経戦、かなり読み応えがありました。
こういう戦いを緊迫感を持たせてきっちりと描けるのは、さすがだと思います。
テンポのいい会話は相変わらず健在で、小牧の恋愛、柴崎の内面、手塚の確執などの事情にもスポットライトが当てられ、内容もとても充実していました。
最後には郁に「王子様」の正体が明かされ、さあどうなる?……というところで、この巻は終了。
続きがとても気になります。
投稿者 utsuho : 22:04 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年11月17日
近藤史恵 / 賢者はベンチで思索する
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近藤史恵さんの「賢者はベンチで思索する」を読み終わりました。
フリーターの久里子と、久里子のバイト先のファミレスの常連客である国枝老人が日常の謎を解いていく物語です。
久里子や国枝老人だけでなく、登場人物のだれもが、世の中を生きにくいともがきながら、それでも少しずつ望みを持っていく姿がよかったです。
ミステリーといっても殺伐としたものではなく、読み終わった後にどことなく温かい気持ちにさせてくれる一冊です。
投稿者 utsuho : 14:25 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年11月 5日
有川浩 / 図書館戦争
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一、図書館は資料収集の自由を有する。 二、図書館は資料提供の自由を有する。 三、図書館は利用者の秘密を守る。 四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。 「図書館の自由に関する宣言」より
有川浩さんの「図書館戦争」を読み終わりました。
公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律として「メディア良化法」が成立し、その検閲権に対抗するために成立した「図書館の自由法」。
その両法の施行から三十年が経過した正化三十一年。
良化特務機関と図書館の抗争は激化し、良化隊、図書館員ともに銃火器で武装している世界。
主人公の郁をはじめ、同僚の柴崎、上司の堂上や小牧といった人々がみな個性豊かで楽しく読めました。
それぞれに思惑があり、激突したりすれ違ったり、活き活きとした描写に引き込まれました。
ただ、難点を言えば「敵方」の個性が弱いですね。良化隊にも魅力的な悪役がほしかったです。
冒頭の「図書館の自由に関する宣言」は、実際に日本図書館協会の綱領として、図書館に掲げてあるそうです。
ただ、そこからこんな銃弾飛び交い汗の飛び散る熱い物語が作り上げられてしまうのはすごいですね。
投稿者 utsuho : 19:02 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年10月23日
米澤穂信 / ボトルネック
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米澤穂信さんの「ボトルネック」を読み終わりました。
恋人を弔うために東尋坊を訪れたリョウは、そこで眩暈におそわれ崖下におちてしまう。
――目覚めたところは、産まれなかったはずの姉のサキのいる世界。
リョウはサキと一緒に、自分のいた世界との「間違い探し」をすることになり……。
正直、重かったです。
サキのいる世界では、意識的、無意識的な選択をしたことに対して、リョウが「選ばなかった」ことで起こる「違い」を見せられる。
ひとつひとつの違いを検証していき、最後にわかる本当の「間違い」の残酷さと、湧き上がる虚無感に圧倒され、米澤作品独特の苦さが口いっぱいに広がりました。
最終章の解釈は人によって分かれると思うけれど、私としては、そんな世界でもまだ取り返しがつくと信じたいです。
投稿者 utsuho : 15:20 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年10月13日
杉浦日向子 / ごくらくちんみ
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杉浦日向子さんの「ごくらくちんみ」を読み終わりました。
一片の珍味と一杯のお酒、そこに添えられる、人生のさまざまなシーン。
思い通りにいかないからこそ味わい深い人生の味をあらわしたようで、紹介されるひとつひとつの珍味と、しっかりと向き合った姿の感じられる作品です。
やはり珍味と言えばお酒とくるわけで、お酒の飲めない我が身が悲しくなりますね。
どうあがいたところで二つとない人生、鬱々と考え込むよりも、明るく楽しんでいかなければと思いますが、なかなかどうして良く生きることも難しい……。
投稿者 utsuho : 12:28 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年10月 1日
坂木 司 / シンデレラ・ティース
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坂木司さんの「シンデレラ・ティース」を読み終わりました。
幼い頃の歯医者での体験のせいで歯医者嫌いの咲子。
ところが、母親の策略に引っかかり、叔父の勤める「品川デンタルクリニック」で受付のアルバイトをすることに……。
歯医者を舞台にしたちょっとしたミステリの短編集です。
登場人物がみな「いい人」で、ちょっと人物描写に物足りなさは感じましたが、肩の力を抜いて、安心して読めました。
咲子の心境が少しずつ変化してくる様子もよかったです。
最後の一編「フレッチャーさんからの伝言」に出てくる「よく噛んでよく食べ、よく笑いよく喋りよく笑うこと。」という言葉は、毎日をよりよく暮らしていくためにも大切なことだと思います。
投稿者 utsuho : 10:25 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年9月 3日
近藤史恵 / ヴァン・ショーをあなたに
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近藤史恵さんの「ヴァン・ショーをあなたに」を読み終わりました。
「タルト・タタンの夢」に続く、「ビストロ・パ・マル」を舞台にした短編ミステリ集です。
「ブーランジュリーのメロンパン」では、サイクルロードレース好きにはたまらない小粋なネタににやりとしました。
綿密な取材をうかがわせる近藤さんの作品ですから、私が気づかないところにも、きっといろいろなネタがちりばめてあるのでしょうね。
金子さんおすすめの「ブラン」のツナマヨパンが気になります。
「氷姫」は、どこまでも透き通る氷のように、冷たくて儚くて、でもどこか心に染みてくる話です。
そして「パ・マル」に訪れる人々の心まで温めてくれるヴァン・ショー。
表題作「ヴァン・ショーをあなたに」では、三舟シェフの修行時代までさかのぼり、その秘密の一端が垣間見られます。
今回は金子さんの俳句がなかったのが残念ですが、登場人物それぞれの過去にも少しずつ触れ、ますます親しみが増してきました。
投稿者 utsuho : 12:13 コメント (0) トラックバック (0) | 読書
2008年4月14日
三浦しをん / まほろ駅前多田便利軒
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三浦しをんさんの「まほろ駅前多田便利軒」を読み終わりました。
物語の舞台となっている「まほろ市」ですが、私が買い物などでよく行く街がモデルになっていて、しかも街の様子が事細かに描かれていて、読んでいて「ああ、これはあそこのことか」とイメージが頭の中に鮮明に浮かびました。
この「まほろ市」で便利屋稼業を営んでいる多田と、そこへ居候を決め込んだ行天、そしてさまざまな人たちが織り成す人間模様。
飄々とした行天とそれに振り回される多田のやりとりが面白かったです。
物語全体に虚無感が漂っているようで、読んでいてふっと「生きていくこと」について考えさせられました。
投稿者 utsuho : 22:08 コメント (0) トラックバック (0) | 読書