2011年1月 4日

米澤穂信 / 折れた竜骨

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)

米澤穂信さんの「折れた竜骨」を読み終わりました。
ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。
領主である父を暗殺騎士の魔術によって殺されたアミーナは、騎士フィッツジョンとその従者ニコラとともに、誰が暗殺騎士の<走狗>なのかを暴くために探索を始める――。

魔術が平然と存在する世界であり、それらを考慮に入れた思考を強いられるあたりが、特殊設定ものでしたが、おおむね普通のミステリと言って差し支えなかった気がします。
そして、米澤さんの書くミステリならば、安心して読めるというものです。
最後はどうしても苦味の残るものになりましたが、街並みなどの描写もよく、「時代もの」と「ミステリ」を読んだ満足感のある作品でした。

投稿者 utsuho : 00:55 コメント (0) トラックバック (0) | 読書

2010年11月30日

小野不由美 / ゴーストハント1 旧校舎怪談

ゴーストハント①旧校舎怪談 (幽BOOKS)

小野不由美さんの「ゴーストハント1 旧校舎怪談」を読み終わりました。
以前に刊行された「ゴーストハント」シリーズの、大幅なリライト版です。

「十二国記」に慣れ親しんだ私にとって、不由美さんの一人称の文というのはなんとなく不思議な感じもしたけれど、読み進んでいくうちにすぐに物語へ引き込まれました。

この作品には、CDドラマ、マンガ、アニメといった他のメディアですでに触れていたこともあり、キャラクターやストーリーはほぼわかっている状態でしたが、不由美さんの文章を楽しみました。
不由美さんの書くストーリーはよく練り込まれていて、安心して読めます。

これから隔月で刊行されていく予定、とても楽しみです。

投稿者 utsuho : 19:46 コメント (0) トラックバック (0) | 読書

2010年10月13日

有川浩 / キケン

キケン

有川浩さんの「キケン」を読み終わりました。

成南電気工科大学機械制御研究部、通称「キケン」。
表紙から察するに、熱く激しい物語かと思いきや、さにあらず。

男子が集まって本気で馬鹿をやるとどうなるか、ということを見せつけるような作品でした。
そして、それから幾年が経った時に思い出したり感傷に浸ったり……。

キラキラしていて眩しいです、有川さんっ!!

投稿者 utsuho : 21:26 コメント (2) トラックバック (0) | 読書

2010年10月 1日

近藤史恵 / あなたに贈るキス

あなたに贈るキス (ミステリーYA!)

近藤史恵さんの「あなたに贈るキス」を読み終わりました。

感染から数週間で確実に死に至る病、ソムノスフォビア。その感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。やがて、ほとんどの国でキスは違法行為となった。
全寮制の高校、リセ・アルビュスで一人の女生徒の死をきっかけに、不穏な空気が流れ始める――。

美詩と梢の意気込みや思惑の差、唇を合わせることに対して心境が変化していく様子など、史恵さんの穏やかで丁寧な筆致で、外界から隔絶された学校の雰囲気をよく描き出していました。

ただ、分量として少し物足りなかった気もします。
史恵さんの文章は、もっと濃く楽しみたい気持ちになります。

投稿者 utsuho : 21:28 コメント (0) トラックバック (0) | 読書

2010年9月 7日

恒川光太郎 / 夜市

夜市 (角川ホラー文庫)

恒川光太郎さんの「夜市」を読み終わりました。

「夜市」も「風の古道」も、日常の少し隣にある異世界の雰囲気のよく出た作品でした。
人物描写の薄さなど、もう少し筆力が欲しいところですが、これがデビュー作ということなので今後の課題なのかなあ。

作品とは関係ないけれど、熊野古道へ行きたくなってきました。

しかし……、巻末にある大仰な解説がちょっといただけないですね。

投稿者 utsuho : 14:32 コメント (0) トラックバック (0) | 読書

2010年8月30日

大西科学 / さよならペンギン

さよならペンギン (ハヤカワ文庫 JA オ 9-1) (ハヤカワ文庫JA)

大西科学さんの「さよならペンギン」を読み終わりました。

あらゆる事象の可能性により無数に生成され続ける平行世界のうちで、1500年もの間「自分生きている世界」を生き続けている<観測者>の南部観一郎と、南部につき従っている<延長体>のペンダン。
街に出た時にペンダンが黒い男に襲われる。自分以外の<観測者>に初めて出会うかもしれないと期待する南部。
世界に選択され続ける者の行く末は――。

大西さん独特の日常感と、永い時間を生きている<観測者>のどこか突き放したような視点の描写が良かったです。
<観測者>、<延長体>というアイデアが、自分以外の<観測者>の存在に期待する南部と、自分が何者かを知る<延長体>ペンダンの微妙な意識のズレなどに上手く昇華されていました。

どこか懐かしいような、とても日本人的な感性のSFです。

投稿者 utsuho : 12:06 コメント (0) トラックバック (0) | 読書

2010年8月12日

「阪急電車」映画化!

Walkerplusの記事によると、有川浩さんの小説「阪急電車」が映画化されるそうです。

あまり俳優のことは知らないのだけど、翔子役の中谷美紀さんというのは結構合っている気がします。
情念のこもった討ち入りを見せてくれそうです。
個人的には、えっちゃん達のバカ話シーンとかが気になりますね。

とは言え、映画化にするほどに盛り上がるシーンがあるわけでもないので、その辺はどうなるのかなあ。あまり原作をいじってもらいたくはないけれど……。

公開は2011年初夏だそうなので、楽しみに待ちたいと思います。

投稿者 utsuho : 01:04 コメント (0) トラックバック (0) | 映画,読書

2010年8月 3日

近藤史恵 / 薔薇を拒む

薔薇を拒む

近藤史恵さんの「薔薇を拒む」を読み終わりました。

陸の孤島とも言うべき山奥の洋館。
雇われた二人の少年と、館に住む少女。
突如として起こった事件により、穏やかな関係は一変し――。

近藤さんの洋館もの、なかなか雰囲気があって面白かったです。
ただ、サクリファイスのチカなどもそうなのだけれど、主人公や登場人物がやや淡々としたところがあるので、もっと内心の渦巻く情念みたいなものが見たかったです。

ラストについてはあれでよかったのか……、ちょっとモヤモヤしたものが残りますね。

投稿者 utsuho : 12:01 コメント (0) トラックバック (0) | 読書

2010年7月 8日

米澤穂信 / ふたりの距離の概算

米澤穂信さんの「ふたりの距離の概算」を読み終わりました。
<古典部>シリーズの最新刊です。

新しい春を迎え、奉太郎たち古典部のメンバーも高校二年生に進級して、新入生の大日向友子が古典部に仮入部することに。だが、本入部の直前になって、彼女は突然入部をやめると言い出します。その原因はどこに……?

1年が経ち、古典部のメンバーの関係が少しずつ変わってきています。
そして、その中に加わった大日向という新しい要素。
「星ヶ谷杯」というマラソン大会を舞台に、思考が行ったり来たりする様子がよく描かれていてよかったです。

最後にすんなりとは終わらない穂信作品、これからの古典部はどうなっていくのでしょう。

投稿者 utsuho : 23:22 コメント (0) トラックバック (0) | 読書

2010年4月21日

森見登美彦 / 宵山万華鏡

宵山万華鏡

森見登美彦さんの「宵山万華鏡」を読み終わりました。

「宵山」をめぐる、めくるめく虚構と現実。
繰り返しているようでいながら、二度と同じ景色は現れない、まさに万華鏡のような物語でした。

京都の不思議を舞台にしているという点で、「きつねのはなし」と雰囲気が似ているでしょうか。
モリミーの持つ陰と陽とが色濃く出ている作品だと思います。

私としては、「宵山金魚」と「宵山劇場」が好きです。
山田川のとどまるところを知らない妄想力と、ぶつくさ言いながらもそれを実現してしまう小長井はいいコンビですね。
現実の枠を飛び越えてどこまでも広がり続ける大風呂敷が、、読んでいて気持ちよかったです。

投稿者 utsuho : 21:02 コメント (0) トラックバック (0) | 読書