2007年7月 4日
梨木香歩 / 家守綺譚
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梨木香歩さんの「家守綺譚」を読み終わりました。
四季のうつろいを感じさせる、匂い立つような文章がとても印象的でした。
行方不明となった友人の実家をあずかることとなった主人公が身のまわりのできごとをありのままに受け入れる様子や、犬のゴローとのつかず離れずの関係など、ただそこにあるものを楽しむことができました。
主人公に惚れるサルスベリや信心深い狸など、怪異と言ってしまってはもったいないような、この国に昔から伝わっていた自然とのつきあいが感じられて、一編一編の情景がまるで一幅の絵のように目の裏に浮かんでくる作品です。
――サルスベリのやつが、おまえに懸想をしている。 ――……ふむ。 先の怪異はその故か。私は腕組みをして目を閉じ、考え込んだ。実は思い当たるところがある。サルスベリの名誉のためにあまり言葉にしたくはないが。 ――木に惚れられたのは初めてだ。 ――木に、は余計だろう。惚れられたのは初めてだ、だけで十分だろう。 高堂は生前と変わらぬ口調でからかった。 (梨木香歩「家守綺譚」より)
投稿者 utsuho : 2007年7月 4日 22:35 | 読書
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