2006年8月22日
池波正太郎 / 梅安料理ごよみ
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池波正太郎さんの作品といえば、その話の面白さはもちろんのこと、話の中に出てくる美味しそうな料理の描写に定評があります。
現在では温室栽培などでスーパーに行けばどんな野菜も一年中手に入れることができますが、江戸時代では野菜にも魚にも旬というものがありました。
だからこそ、旬の野菜は本当に美味しいものだったろうし、その季節感をあらわすために池波さんは料理のことを細かく描写したのだと思います。
この本は「仕掛人・藤枝梅安」シリーズから、そうした季節感をあらわした料理の出てくるシーンを抜き出し、それぞれの料理について、佐藤隆介さん、筒井ガンコ堂さんが解説をいれるというもので、本編ではさらりとしか触れられていない料理について、いろいろと薀蓄が語られています。
「仕掛人・藤枝梅安」シリーズは内容が重いので読むのに気合がいりますが、この本は気が向いた時に軽くめくって美味しそうな料理のシーンを楽しむことができるので気に入っています。
もちろん、本編の楽しみ方とは外れてしまいますけどね(笑)
藤枝梅安が、台所の小杉十五郎へ、 「小杉さん。こっちへおいでなさい。まだ明るいが、いっぱいやりましょう。ちょうど、いい肴が入ったことだし……」 「いま、まいる」 と、台所で十五郎がこたえる。 彦次郎が鰹の入った桶を抱えて立ちあがり、 「梅安さん、まず、刺身にしようね?」 「むろんだ」 「それから夜になって、鰹の肩の肉を掻き取り、細かにして、鰹飯にしよう」 「それはいいなあ。よく湯がいて、よく冷まして、布巾に包んで、ていねいに揉みほぐさなくてはいけない」 「わかっているとも」 「薬味は葱だ」 「飯へかける汁は濃目がいいね」 「ことに仕掛がすんだ後には、ね。ふ、ふふ……」 (池波正太郎「梅安料理ごよみ」より)
投稿者 utsuho : 2006年8月22日 02:51 | 読書
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