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2010年7月12日

居合道日記 / 業から体系を考える(その2)

「最適化」というと現代のコンピュータ用語のようですが、居合道にも「最適化」はあります。
動作の最適化、つまり「無駄な動きをなくす」ということです。

たとえば、刀を振り下ろすとき、膝下よりもさらに下まで斬り下ろした後で所定の位置にもどす、とか。
「月影」で立ち上がる時に右膝を正面よりも右側に開いた後、正面に戻す、とか。

ひとつひとつの動きはコンマ1秒程度の無駄だとしても、ひとつの業で5つの無駄動きをすればコンマ5秒の不利となります。剣術でコンマ5秒といえば、生死を分けるに充分な時間になります。

逆にそういう無駄動きを切り落としていくことで、相手充分の状況を覆すべき自分の利を生みだしているとも言えます。
私の習っている流派でいえば、数百年かけて無駄を削ぎ落としてきたということで、それは個々の業よりも重要な、流派の業すべてに係る「教え」であると思います。

先生から業を習ったときに、ただその動きを真似るだけでなく、「この動きにはどのような意味があるのか?無駄な動きではないのか?」と考えてみることも必要なことだと、私は思います。

投稿者 utsuho : 2010年7月12日 15:00 | 居合道

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コメント

空穂さま

業における「無駄な動き」に対するお考え、自らを省みながら拝見させていただきました。
恥ずかしながら、自分では気づけずに、無意識に内に、業のあちこちに、無駄な動きが多く入り込んでおり、それらが身体のブレとなって大きく出てきたり、刀の動きと身体の動きの調和にズレを発生させたりと、ムダが積み重なって、やっと自分で気付いたり、見かねた先生がご指摘くださったり、というレベルです。
一つ一つの業の動きに合理性や最適性を、少しでも意識しながら練習できるよう努力してまいりたいと思います。
いつも貴重なお考えを示していただきありがとうございます。

投稿者 三河武士 : 2010年7月12日 19:41

>三河武士さん
いつもありがとうございます。
「無駄動き」というのは、業をこなしているだけでは気付けないところにあって、動きをひとつひとつ分解して考えてみて、初めてわかるものだと思っています。

習った動きに対して疑問を持って、先生にぶつけてみるのもいいかもしれませんね。

投稿者 空穂 : 2010年7月12日 20:46

ほんのちょっとした発見でがらりと変わることがあるんですよね。
発見とは言っても別に特別な事でなく言われ続けてる事の再認識とか。
随分前にある先生からとにかく考えることをやめず疑問を持ち続けろと言われました。
ただ教えられた事をトレースしてるだけでは居合になりませんものね。

投稿者 ほそ : 2010年7月12日 22:29

>ほそさん
これまで習ってきたことすべてに対して、「無駄動きをしていないか?」という疑問をぶつけたら、いろいろと発見があると思います。

「疑問を持ち続けろ」と教えるということは、「自分の教えたことをまず疑え」という教えであって、そういうことを言ってくれる先生は、とてもいい先生だと思います。

「トレースするだけでは居合にならない」ということは私も常に思っていますが、同時に、初心者のうちは「上手い人の演武は、業だけでなく呼吸や拍子まで徹底的にトレース」してもらいたいという思いも持っています。

投稿者 空穂 : 2010年7月12日 23:38

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