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2009年7月22日

米澤穂信 / 儚い羊たちの祝宴

儚い羊たちの祝宴

米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」を読み終わりました。

作品全体にただよう仄暗く頽廃的な雰囲気にすっかり呑み込まれました。
この雰囲気は、各作品に共通して登場する読書会「バベルの会」の持つ空気でもあるんですね。

「玉野五十鈴の誉れ」と「儚い羊たちの晩餐」は特に良かったです。
「玉野五十鈴の誉れ」では純香と五十鈴の微笑ましい交流から、最後の一行にいたるまでの流れがすばらしくて、打ちのめされるようでした。

そして、全体にただよう仄暗さのクライマックスとしての、最後の「儚い羊たちの晩餐」。
アミルスタン羊という言葉は初めて知りました。
儚い夢想に饗された憐れな羊たち。厨娘の夏さんがアミルスタン羊料理を紹介するシーンでは料理を頭に思い浮かべてしまって戦慄が走りました。

米澤さんは一人称の使い方がとても上手で、各短編の主人公の視点や感性が物語の雰囲気に反映されていると思いました。
暑い季節に、ちょっと背筋が涼しくなるような一冊です。

投稿者 utsuho : 2009年7月22日 21:56 | 読書

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コメント

空穂さん、こんばんは。
こういうブラックな話も米澤さん上手いですね。
仄暗さ、頽廃の香り、時代設定や舞台立てもぴったりで、すっかり魅了されてしまいました。
空穂さんも上げているふたつの作品は特に好きです。
背筋がひんやり読書にはまさにうってつけですね。

投稿者 雪芽 : 2009年7月29日 22:17

>雪芽さん
こんばんは。
庶民には縁のない上流階級の子女の、華やかならざる世界。米澤さんの舞台設定と表現は見事です。
タイトルが示すとおりの、儚い羊たちの仄暗い世界を堪能しました。

投稿者 空穂 : 2009年7月30日 11:23

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