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2007年8月14日

森見登美彦 / 太陽の塔

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森見登美彦さんの「太陽の塔」を読み終わりました。

京の街を舞台に繰り広げられる男たちの妄想と暴走の饗宴。
黒々とした男汁で煮しめたような、汁気のある文章がとても楽しかったです。

飾磨や高藪、水尾さんといった登場人物もみな個性豊かに京の街をにぎわしてくれます。

森見さんの文章は独特のテンポがありますね。
すんなりと読める文章でありながら、ところどころで重たい一撃を放ってくる絶妙なバランスにすっかりやられました。

「つねに新鮮だ」
 そんな優雅な言葉では足りない。つねに異様で、つねに恐ろしく、つねに偉大で、つねに何かがおかしい。何度も訪れるたびに、慣れるどころか、ますます怖くなる。太陽の塔が視界に入ってくるまで待つことが、たまらなく不安になる。その不安が裏切られることはない。いざ見れば、きっと前回より大きな違和感があなたを襲うからだ。太陽の塔は、見るたびに大きくなるだろう。決して小さくはならないのである。
 一度見てみるべきだとは言わない。何度でも訪れたまえ。そして、ふつふつと体内に湧き出してくる異次元宇宙の気配に震えたまえ。世人はすべからく偉大なる太陽の塔の前に膝を屈し「なんじゃこりゃあ!」と何度でも何度でも心おきなく叫ぶべし。異界への入り口はそこにある。
(森見登美彦「太陽の塔」より)

投稿者 utsuho : 2007年8月14日 23:20 | 読書

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