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2007年3月29日

南條竹則 / 酒仙

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南條竹則さんの「酒仙」を読み終わりました。
第5日本ファンタジーノベル大賞で優秀賞を獲得した作品です。

主人公の暮葉左近は酒星のしるしを帯びた救世主として、使命を果たすべく酒徳をつまなければならない。
酒徳をつむために古今東西の酒を楽しんでいるところへ、邪悪な「魔酒」を醸す三島業造があらわれて……。
はたして左近は世界を救えるのか?

もう、あまりにも馬鹿馬鹿しくて、とても楽しい作品でした。
左近のように楽しい酒を味わうことができたら、さぞかし幸せなことでしょう。
もっとも、左近は物語の冒頭で酒呑みが過ぎてお家をつぶしてしまうわけですが……。

この作品に出てくるお酒はもちろんのこと、それに負けずに酒の肴もとても美味しそうです。
小さくにぎった塩にぎりに升酒、ミミガーに泡盛、小籠湯包に老酒……こうなると、お酒の呑めない我が身が恨めしいですね(笑)

古今東西の神話・伝説・文学・人物がことごとく酒に結びつき、左近はこれまた古今東西の酒と肴に酔いしれる。
こういうファンタジーもいいものですね。

この本は「妖精と黒薔薇の書架」の椿子さんのレビューに促されて読んだ本です。
興味がありましたら椿子さんのレビューもぜひお読みください。

 酒精の度数は普通の竹葉青酒よりも低い。だが、香りははるかに高い。口に入れると、竹の匂いのする綿菓子を頬張ったような感じがした。かおりが舌から口蓋、鼻頭にわきあがって、ほろほろと溶けくずれてゆく。幼い日の慕情のごとくほのかな甘味が、竹の葉の苦味にからんでいる。
「さすが、乙姫さまのおすすめものだ」
 感嘆していると腸詰が来た。きざみ葱が添えてある。
 中華の腸詰もこれまた種類が多く、土地土地によって風味は千変万化である。日本でよく見かけるのはサラミ状に固く乾燥させたものだが、楊州飯店の腸詰はそうではなくて、やわらかいソーセージだった。噛むと肉汁が口の中にじわっとひろがり、五香粉の芳香が鼻にぬけた。
(南條竹則「酒仙」より)

投稿者 utsuho : 2007年3月29日 15:10 | 読書

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コメント

こんばんは。
これ、本当に面白いですよねー。

空穂さんが引用してある
乙姫さんの場面も凄く好きでした。
あとは、
三島家で小さい舟で流してくるおつまみ…みたいな趣向も面白そう。
なんか流しそうめんみたいで(…)ちょっとやってみたいです。

お酒飲めるようになったら
古今東西の色々なお酒を飲んでみたいです。

投稿者 椿子 : 2007年3月31日 20:40

こんにちは。
コメントありがとうございます。

本当にすべてが軽くて馬鹿馬鹿しいのに、引用などはしっかりしている、不思議な本でした。
いろいろな趣向が出てきて、想像するのも楽しいですよね。

酒呑みというのは、お酒を楽しむためならいろいろなことを考えるなあと変な感心をしてしまいました。

投稿者 空穂 : 2007年4月 1日 00:15

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