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2007年2月23日

奈須きのこ / DDD1

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奈須きのこさんの「DDD1」を読み終わりました。

リズムのいい語り口と、それに反して読み手を幻惑させるような展開で、眩暈を感じながらも気がついたら一気に読んでしまいました。
変態を書かせたら日本でも屈指の書き手であるきのこさんの、本領発揮といったところでしょうか。
一人称の小説で、一冊読むのにここまで消耗するのも、ついぞなかったなあ……。

感染者の精神だけでなく肉体をも変貌させる奇病、通称「悪魔憑き」と呼ばれる患者達。
左腕を失った石杖所在に、四肢に義手義足を持つ迦遼海江。
登場人物も作品世界もどこをとっても不自然極まりないのだけれど、これらが危ういバランスを保っているあたりはさすがだと思います。

物語はようやく入り口にさしかかったあたりです。
きのこさん独特の世界がこれからどのように繰り広げられるか、とても楽しみです。

 そう、もともと悪魔憑きは外国にある与太話だ。ヤツラの基本は一対六十億、しかも神側絶対有利。この世紀末の日本じゃ、悪魔っていうのは神さまが一人だけの宗教においてのみ生きている概念である。
「嘆かわしい。どうせなら犬神憑きとかにすればいいのにな。そっちの方が馴染みがあるっていうか、落ち着くと思うんだが」
「いや、そこはそれ、分かり易くても落ち着いちゃダメなんだよ。いくら信仰が廃れたからって日本人は日本人。なんだかんだって獣憑きって言葉には敏感なんだ。悪魔憑きなら他人事っぽいしゲーム感覚だけど、元からこの国にある病気じゃヘンにリアルでつまらないじゃない?」
「あー……なに、悪魔憑きって言葉の方がネタとして都合がいいってコト?」
(奈須きのこ「DDD1」より)

投稿者 utsuho : 2007年2月23日 22:00 | 読書

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