2006年12月 6日
冲方丁 / マルドゥック・ヴェロシティ(3)
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冲方丁さんの「マルドゥック・ヴェロシティ(3)」を読み終わりました。
ううん、この読み終わった後の虚脱感はどう表現すればいいのだろう。
救いのない最後になることはあらかじめわかっていたことなので、そういった虚脱感ではないのだけれど……。
やはりここは「物足りない」と素直に言ってしまった方がいいですね。
前作の「マルドゥック・スクランブル」と比べてしまうのですが、「スクランブル」でのカジノのシーンの圧巻の描写があったのに比べると、今回の「ヴェロシティ」では本当に淡々と進んでしまった分、感慨がわきませんでした。
ウフコックを濫用するにいたった経緯も、今回の敵役であるフリントとの決着のシーンも、思っていたよりもあっさりと終わってしまいました。
すべてを失っていくボイルドの痛ましさなどはよかったのですが、そのあとにちょっと蛇足的な部分があったために充分な加速感が得られませんでした。
期待が大きかったために、残念ながら厳しい感想になってしまいました。
にこりと笑うウフコック――まるで聖なる何か。なんだかお前から、とても優しい匂いがする。きっと、事件解決の正しい道筋が見えたんだな」 「ああ」折れそうになる心を虚無が支えた――心が虚無になった。「その通りだ」 「良かった……とても嬉しい。……それにしても今日はなんだか体がだるい」ますますぼんやりとする――こちらを見つめる/瞬きを繰り返す。「何だか……ぼうっとする」 「オフィスに行くまで寝ていてもいい」 「そうか……すまない。どうも調子が悪い。気分は悪くないんだが……ボイルド?」 「なんだ?」 「俺が必要な時は起こしてくれるか?」 ちっぽけなネズミの問い――この世の何よりも重く響く。 「ああ」うなずく――震えないよう、ゆっくりと。「もちろんだ」 微笑み。「パートナーだものな」 微笑み――虚無を隠して。「そうだ。お前は俺のパートナーだ」 小さな目が閉じられる――小さな体がゆっくりと倒れる――手のひらで受け止める。 寝息――穏やかに。 (冲方丁「マルドゥック・ヴェロシティ(3)」より)
投稿者 utsuho : 2006年12月 6日 00:01 | 読書
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