2006年11月30日
北森鴻 / 狐闇
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北森鴻さんの「狐闇」を読み終わりました。
≪旗師・冬狐堂≫こと宇佐見陶子を主人公としたシリーズの長編二作目です。
今回は、とある市で競り落とした青銅鏡がもとで陰謀に巻き込まれ、古物商の鑑札を失ってしまった陶子が、青銅鏡の謎を追い姿の見えない敵へ戦いを挑んでいきます。
「狐罠」とは異なり、歴史・民俗学的な色合いの濃い作品になっています。
誰が敵で誰が味方かもさだかでない状況で伏線をめぐらして罠を張り、先手を取ったつもりが後手を踏む。
今回も頭脳戦の面白さを存分に見せてくれます。
複雑な関係を持ちながら読者を混乱させずに物語に引き込んでいけるのは、北森さんの力量のおかげでしょう。
また、この作品に顔を出している人たちが主人公になっている別のシリーズがあるそうなので、そちらも読んでみたいですね。
ただ、今回も「狐罠」同様に殺人事件が蛇足に感じられてしまいました。
事件の根幹に関わる人物についての描写が弱いために、どうにも真実味が感じられないのです。
また、闇に隠された歴史を探るということで、かなりな大風呂敷を広げていますが、それがたたみきれずに消化不良に終わってしまっているところも残念です。
北森さんの文章や人物描写はかなり好みなので、次はもう少し日常的なテーマを扱った作品を読んでみたいと思います。
「要するに一目惚れって奴よ。そんな物と出会える機会は、万に一つあるかどうか。生涯そんな出会いのない野郎の方が多いかもしれねえぜ」 芦辺はややあって言葉を続けた。 「それはきっと、幸福な出会いですね」 「出会ったのかい」 「もしかしたら、いえ……多分」 帳場の下に置いた火鉢から煙管を取り出し、煙草を詰めた芦辺が身を屈めた。すぐに紫の煙が、股のあたりから漂う。 「幸福な出会いか。そりゃ誰にもわからねえよ。もしかしたら無間地獄の入り口に、われ知らずのうちに立っちまったのかもしれねえ」 (北森鴻「狐闇」より)
投稿者 utsuho : 2006年11月30日 00:21 | 読書
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コメント
歴史、民俗学の色合いが濃い作品は好きです
普通の推理モノより色々勉強になりますよね^^
投稿者 ナナオ : 2006年12月 1日 01:38
そうですね。
「隠された歴史が~」とか言われると、ドキドキしますね。
むしろ普通のミステリを読まないので、この作品は、殺人事件なんて
起こらなくても、充分面白いのになあと思ってしまいました。
投稿者 空穂 : 2006年12月 1日 12:56