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2006年11月16日

冲方丁 / マルドゥック・ヴェロシティ(1)

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冲方丁さんの「マルドゥック・ヴェロシティ(1)」を読み終わりました。

この作品は、前作「マルドゥック・スクランブル」に至るまでの出来事を描いたもので、前作のラストシーンから始まり、「マルドゥック・スクランブル」の敵役であるボイルドの回想へと入っていきます。

軍の研究所から外界へ出て、スクランブル-09の担当官としてペアを組むボイルドとウフコック、そして仲間達。
ボイルドは努めて冷静であろうとしていたり、ウフコックは輪をかけて生真面目なところ、ドクターの容姿など、前作との対比が際立っていて、なかなか楽しめます。
まだまだ物語の序盤なので、これからそれぞれの人物がどのようにして変わっていくのかとても興味深いです。

難点をいえば、もともと冲方さんの文章はちょっと装飾過多で鼻につくところがあるのですが、今回はさらにボイルドの視点を文章で表現しようとしているために、文体が独特で読みにくいところでしょうか。
まあ、慣れてしまえばどうということもないのですが……。

この作品は3週連続で刊行されるので、まずは一通り読んでしまってから、後でゆっくり読み直すことになりそうです。

 だがウフコックは突然、希望を見出したかのように目を輝かせた。
「クリストファー教授と一緒に行けば、俺を受け入れてもらえるのか? 研究所の外に、そういう相手がいるのか? 俺を廃棄しようとする相手ばかりじゃなくて?」
 クリストファーの説明――受け入れられる/そして迎え入れられる。力を必要とする者のために働く。
 ふいにボイルドは、ウフコックに与えてやれるものを見つけたという気分を味わった。自分の新たなキャリア――その意義といったものがウフコックを通して伝わってきた。 「それ以上に、俺やおまえが必要とされるということだ」
 ウフコックが大きく目を見開いた。その小さな体が希望ではち切れそうだった。
「本当に? この俺を必要としてくれる相手が現れるなんてことがあるのか?」
「そうだ」
 意図せず浮かぶ微笑――自分の匂いを、相手と同じように感じ取れる着がした。
「おまえを必要とする者が、きっと現れる」
(冲方丁「マルドゥック・ヴェロシティ(1)」より)

投稿者 utsuho : 2006年11月16日 00:13 | 読書

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